塩沢 槙(Maki Shiozawa)
facebook https://www.facebook.com/maki.shiozawa.50
1975年生まれ。作家・写真家。
人間の生き様、仕事を主なテーマに、単行本の制作を中心に活動中。
主な著書『明日へのしょうゆ すべてをなくした蔵元の、奇跡の再生物語』(マガジンハウス)、『百年のしごと』(東京書籍)、『東京ノスタルジック喫茶店』(河出書房新社)等。
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私は24歳のときに写真を撮る仕事からまず始めたのですが、トラベル・フォトジャーナリストになるのがその頃の目標でした。
文章を書くことは小学生から、一眼レフで最初に写真を撮ったのは14歳のとき。
写真と文章とは、その頃からの付き合いです。
それから時間が経ち、仕事の形も変化し現在のノンフィクション取材が中心の活動に至っています。
私が仕事を始めた頃は、まだフィルムカメラが主流の時代で、私もいつも旅行や取材のときは、かばんにびっちりポジフィルムを詰めて、撮影に行ったものでした。デジタルと違って、簡単にプリントにできなかったので、日の目を見ていない写真というのが数百枚、数千枚とあります。
今回は、“旅”について書くということで、そのフィルムカメラ時代の、日の目を見ていなかったポジから写真をセレクトしました。使用した写真はもともとは横写真で、ミャンマーのバガンというところで遺跡(仏塔)に上って撮ったものです。撮影したのは、10年くらい前。いつかまた訪れられたらいいなと思う、忘れられない壮大な眺めでした。このとき、この眺めを前に、イスラエルから旅行できたという青年ふたりと話をし、彼らは自分の国は紛争が起きていて大学の授業が休講中だというような話をしていました。 彼らの写真もまた、日の目を見ていない写真として、私の手元に残っています。

10年の月日が流れて、誰にも見せていなかった写真をこうして使い、見てもらう機会を得たことで、私は自分が写真の仕事を始めた頃の、夢や思いまで思い出しました。 このような機会をいただけたことを嬉しく思っています。
私が今すぐに、取材したいことや書きたいことは、自分の旅の記憶ではありませんが、いつかそんなことも書くことができたらいいなと思いました。
まだ日の目を見ていない、心をこめてシャッターを押した、無数の写真とともに。

それから、今回はちょっと表紙の写真についても書いておきますね。

表紙のために撮り下ろした写真は、カンロ飴でよく知られた株式会社カンロの商品で、プレッツエル型のグミです。株式会社カンロは、『百年のしごと』という本の中で取材をさせてもらってから、それまで以上に愛着を持っているのですが、こちらのグミ、とても面白い食感で、おいしいのです。そして、日本中で売っているお店はたったひとつ。
JR東京駅構内の、グランスタという場所に、特別なカンロのお店があり、そこでだけ買うことができます。
いわば、東京土産ですね。ビジュアルがとてもかわいいのと、おいしいのでお勧めしたく、今回の表紙写真に撮り下ろしました。
かわいいお店なので、東京駅へ行かれたらぜひ立ち寄ってみてください。