塩沢 槙(Maki Shiozawa)
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1975年生まれ。執筆家・写真家。人間の生き様、生き方、仕事を主なテーマに、単行本の制作を中心に活動中。著書に『百年のしごと』(東京書籍)『東京ノスタルジック喫茶店』(河出書房新社)など。


今回は絵本の紹介を交えつつ、本文を書いてみました。
『ふたりはともだち』という絵本は、アメリカ人作家、アーノルド・ローベル(Arnold Lobel)の作品で、
日本語訳で初版が発行されたのが1972年、私が持っているのが2000年に発行されたもので124刷と書いてあります。
つまりこの本は、この時点で124回印刷されたということ。
多くの人に読まれている絵本です。40年以上が経っても、作品に古びた感じは少しもありません。
私が一番好きなお話はエッセイの中に書いたように”おてがみ”のお話なのだけど、
どのお話も季節や自然を感じて精一杯生きる喜びのようなものが、
子ども向けの簡単な文章からびしびしと伝わってくる、素晴らしい作品だと思う。

昔むかし、この絵本を私は大事な友達の家の本棚に差し込んで帰ったことがあります。
遠くに住んでる友人でたまにしか会えない人。
黙って本棚に差して帰るわけですから、どのくらい先に本に気づくかわからないし、誰が置いていったかもわからない。
それでいい、と。もちろん、何も言わずに帰りました。
本の間に日付を入れた手紙を挟んで。
1年半くらい経ったときだったでしょうか。かなり昔のことで、正確な期間は忘れてしまいました。
ある日、絵本に今日気づいたよーと、Faxで連絡が来ました。
もちろん、私の気持ちは差し込んで帰ったときと変わらず、時間が経ってもその友人の事が大切でした。
思えばあれが、一番時間をかけて届けた手紙だったかもしれません。
こういう時間差のある感覚は、ふつうの郵便にも少しありますね。
手紙は書いてから届くまでに時間がかかる。
だから、時間がかかっても、時が経っても変わらない思いを伝えることのできるものだと思っています。
”気分”ではない、”気持ち”です。

私は同じシリーズの『ふたりはいつも』という絵本も持っています。
他にもすごく好きな絵本いくつかあるので、また折を見てご紹介できればと思います。